ある日ズーンと重い痛みが腰にくるようになった。

結構痛いがそこまでではない。でも痛い。というのが２日続き夜からは１０分間隔で痛くなってきた。「あーこれ陣痛っぽいなぁ」と旦那に伝えたら「なにかあったらすぐ助けるから！」と言ってその日は一緒の部屋で寝ることにした（普段は別々。一緒だと屁こけないから）。しかし陣痛でうなり声をあげるたび「大丈夫…？」と起きてくる旦那、そして睡眠を妨げられているため見る見る衰弱していく旦那。

なんだこいつ…余計気使うな…。
仕方がないので机で静かに陣痛を待ち続け時間をチェックしながら夜が明けた。

ちょうどその日は予定日だったので健診へ行くと「あら？子宮口もう７センチ開いてるよ？このまま入院してく？」と気軽なナンパ感覚でお泊り決定、そのまま入院することに。しかし陣痛の強さを測る機械で調べるとどうやら陣痛が弱いらしい
「まぁデブだしな」
陣痛を強くする事も痩せる事も私にゃどうにもできん。

しばらくすると入院患者になったので昼ごはんが出た、やった！メシだ！メシだ！もちろん残さず完食して再び痛すぎない陣痛でベッドをゴロゴロする。
あまりにも変化がないので看護師さんが「うーーーーーん、なかなか強くならないけど分娩室行こっか」と案内される。分娩室ではすぐに点滴をされるのだがまだ平気だ。
『あれだねぇテレビで見るような陣痛にはなかなかならないもんだねぇ』とのんきに考えていたら看護師さんがさりげなく点滴の管に何かを注入していた。
始めに何かは分からなかったがすぐに体が教えてくれた。図々しいおばさんのごとく股にズケズケ痛みが入り込んでくる。待って！！と言うヒマもなく急にやって来たロックンロールな激しい痛み。
「じんつうそくしんざいかぁぁぁ！！」

あまりの変化にパニックになる私。陣痛の時もそうじゃない時も常に一杯一杯。それでも出そうにない赤子。そしたら今度は「じゃあ人工的に破水させるね～」と股で何か始めた。もう知らんけど早く出してくれりゃー何してもいいよ！！

カーテンを挟んだ隣の分娩室では突然運ばれてきた妊婦が２０分で産んでいった。コンビニ感覚の気軽な分娩だ。思わず羨望の声をあげる。

いつまでも痛いので完全に怖気づいてずっと弱音を吐きまくる。助産師さんが少しでも離れるとと呼び止め、

かといって親切に腰をさすってもらうと
「それいらなーーいいですうぅ」

汗ダクダクの私をうちわであおごうとすると
「その冷気は必要ないですぅぅ」

と親切を全て断る面倒な妊婦、それが私。

そんななか、部屋の隅っこに誰か発見！研修医か！！
ただ遠くからジッと見ているだけだったので

「てめぇ暇そうにしやがって…」

と睨みをきかせていたらこちらに寄ってきて「大丈夫ですよ！」

とピュアな目で励ましてきた。もちろん心の中では
「お前がうっとおしいから睨んでたんだよ！！」
と叫んでいるのだが未来の産婦人科医を傷つけてはならない。この子は大事な希望の星なのだ。しかたないので無言で手をにぎられておく。

分娩中は大開脚をしなければならないが痛すぎて開けられない、子宮口も全開になったのでもう赤子をふんばって出してもいいのだが。もうありえないんだってでかさが！！！ムリムリムリムリ、出ないです出ないです。ふんばれないです、股どうにかなってしまうっす。

そして促進剤注入から２時間以上経ち疲労でボロボロ、いっそ切ってもらって出したい気もするがやっぱりそれも痛そうだ。もうやめたい、よしこの質問をしてまだまだだったらもう諦めよう…（何を？）

えっ？マジで？ほぼゴール？

ここった辺からはほとんど記憶がないがとにかくビビリながら必死でいきんだ。開かない両足を助産師さんに押さえつけられながら必死で子を出すことに専念した。

んでもってなんとか産まれました。
天使のような男の子でした。